事故例・失敗例:事例2
事故例・失敗例>事例2 390kw直流発電機補償巻線溶断事故
- 【定格】
- 開放管通風強制通風機付直流発電機
([ ]-4P-390kw-440V-240/1310rpm 1985年製造)
- 【経過】
- H11-4
- 補償巻線と接続銅帯との接合部で溶断事故発生。弊社にて修理。
- H16-7
- 場所は異なりますが、前回と同様に補償巻線と接続銅帯との接合部で溶断事故発生。
- H16-7
- 予備機と入れ替え。
- 【事故状況】
- 整流子側の補償巻線と接続銅帯との接合部で1箇所溶断し、その上隣接する補償巻線の一部が溶損していました。
- 【事故原因調査】
- 事故発生場所が補償巻線と接続銅帯との接合部なので、何らかの原因で運転中に接合部が剥離したことが事故の発端と考えます。
- 事故部と同様な接合部計159箇所に、剥離進行途中の部分はないか表面塗布ワニスを除去後周囲を清掃して目視点検しました。しかし異常はありませんでした。
- 前回(H11-4)の事故修理では、浸透探傷検査を行い異常がないことを確認していました。
- 従って接合面内部に異常があるのではないかと考えて、専門検査会社にお願いして超音波探傷検査を行いました。その結果159箇所中54箇所は、接合面の全面積の1/3以上は溶着してなく、又、中には80%以上溶着していない箇所もあることが判明しました。
- 超音波探傷検査にて欠陥指示のあった接合面を加熱して剥がし、接合面を目視点検しました。その結果、接合面は加熱すると簡単に剥れ、又剥離面は銀ロー層でなく母材側で、表面は酸化してザラザラした面でした。
- 一般にタフピッチ銅は、水素を含む雰囲気で加熱すると水素脆性を起こすことが知られています。本機も製造時のロー付け作業でアセチレンガス等を使用したと考えられますが、その加熱炎に含まれる水素で水素脆性を起こしたものと考えられます。
- 【推定事故原因】
- 以上の調査より事故は銅帯接合部で発生していること、超音波探傷検査で接合欠陥指示のあった接合部が多数箇所あること、欠陥指示の出た接合面を剥がしたところ母材側で剥がれ、しかも剥離面は粒界割れと思われる様相を呈していたこと等から、製造時の接合面のロー付け作業時に水素脆性を発生させたものと推定します。その結果、残りの健全な接合面積が少ないため運転中の冷熱変化によるバーの伸縮や振動により健全な接合部も徐々に剥離し、その結果、剥離面間にアーク放電が発生し、遂に溶断に発展したものと推定します。
- 【反省】
- 最初の事故(H11-4)時は、たまたま接合不良箇所があり事故が発生したものと 安易に考え、徹底的な原因調査をしませんでした。
- 同様な事故を再び発生させた後やっと真の原因が把握でき再発防止が出来たと 考えます。しかし、お客様に対し一度ならず二度もラインストップさせ、大変ご迷惑をお掛けしました。