事故例・失敗例:事例1
事故例・失敗例>事例1 300KW同期電動機ステータコイル焼損事故
- 【定格】
- 開放管通風形同期電動機([ ]-10P-300KW-3.3KV-50Hz 1964年製造)
- 【経過】
- H15-1
- 絶縁診断の結果、5段階評価で真中の「3」と判定。特に緊急に対策の必要はないと判断。
- H15-8
- 定修後の試運転の為昼頃始動したところ、始動約1分後上部排気口より火花が出ているのが確認され急遽停止。(保護リレーは動作していない)ステータコイルの絶縁抵抗は0MΩに低下。
- M15-8
- 予備機と入れ替え。
- 【事故状況】
- 反負荷側コイルエンド部絶縁表面に焼損痕が発生していました。
- 事故写真の説明付
- 【事故原因】
- 定修等で長期に停止すると、絶縁表面に付着した塵埃が吸湿して導電性を持ちコイルエンド部表面の沿面抵抗が低下します。この事故はコイルエンド部絶縁層に発生したピンホール(外傷?)が起点となり、以前より事故には発展しなかったが吸湿した状態で始動され、そのたびに当該部に漏洩電流がながれて絶縁表面にトラッキングが発生していたものと考えます。今回は長期停止時に長雨が続いたこともあり、遂に大きな漏洩電流が流れて焼損事故に発展したものと考えます。
- 【反省】
- お客様の調査では、1998年以前から定期的に測定していた絶縁抵抗の値が大きく変動していた。従って1998年以前よりコイルエンド部絶縁層に欠陥が発生していたものと推定される
- 絶縁診断ではこの種の欠陥が絶縁層に発生しても、診断時コイルエンド部表面が乾燥していれば検出不可能。
- 長期停止後に始動する際は、必ず絶縁抵抗を測定して異常の有無を確認すること
- 【まとめ】
- 今後は絶縁診断結果だけでなく、定期的に測定している絶縁抵抗の結果を勘案して各々の電動機の定検計画を立案する必要があります。
コイルエンド部のピンホールの発見方法と対策
定期的に測定する絶縁抵抗測定にて値が大きく変動する場合は、事例1のようにコイルエンド部絶縁層にピンホールが発生している事があります。従って恒久的に対策するには、ピンホール発生部分がどこにあるかを調査して、当該部にマイカテープを巻きまわし確実にシールする必要があります。
- 【ピンホールの発見方法】
- テータ単体にしてステータコイル端子にメガー接続し測定状態にしたまま、コイルエンド部にスプレーガンなどを利用して万遍に水を噴霧します。それでメグ値が急変しないか確認しながら、徐々に下部から上部に水を噴霧してピンホール部分を追求します。一般には一旦メグ低下するとそのままではメグがなかなか回復しませんので、熱風乾燥機で熱風をコイルエンドに吹きかけメグを回復させて繰り返し繰り返しおこないます。
- 注意点
- ピンホールの発生部分がなかなか把握できない為、コイル洗浄乾燥後に 再び調査をしようと考えてはいけません。コイル乾燥が完全になされると、絶縁表面から芯線に至る経路の導電性が失われるため、新たに絶縁表面に水を噴霧しても今度はメグが低下しにくくなります。従って本作業はステータコイルを完全に乾燥する前に終了するようにしてください。
- 【ピンホールの発生しやすい場所】
- どのメーカの回転機でもそうですが、コイル口出し線の分岐部特にコイル巻き始め側が圧倒的に多いことを経験しています。それ以外はコイルエンド部相互糸縛り部分や渡り線の糸縛り部分がありました。尚ピンホール発生箇所が一台に5箇所発見したこともあり、必ずコイルエンド部全体を確実に調査する必要があります。
- 【恒久対策】
- 当該部にマイカテープを巻き回す事が必要です。コイル口出し線の分岐部は非常にマイカテープが巻き難い所です。見栄えは悪くなりますが何とか工夫しながら必ずマイカテープを巻き回すようにして下さい。ワニス処理や絶縁コンパウンド充填だけでは、後日ワニスの塗膜や絶縁コンパウンドが剥れたり亀裂が発生したりして、メグ低下が再発することを経験しています。