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事故例・失敗例:事例7
事故例・失敗例
>事例7 磁性楔脱落により、ロータ鉄心表面が大きく摩耗した事例
【定格】
220kWカゴ形誘導電動機
[ ]-4P-220kW-1480rpm-3300V-50Hz-F種 日本製 1989年製造
【経過】
1990年11月
運転開始
2008年1月
オーバホールの為弊工場搬入
【分解調査結果】
ステータ関係
ステータコイル楔は、180本(スロット数60、1スロット当り3本の楔が挿入されている)中脱落してロータ鉄心と接触し粉末化した楔が8本、緩みが発生し所定位置より浮き上がっている楔が4本、打音チェックにて緩みが発生している楔が12本あり、これらの楔は写真1の様にステータ内のある部分に集中していました。 写真2に磁性楔打替え後の鉄心内面の状況を示します。この様に集中して脱落楔や緩み楔が発生するのは、合成樹脂真空加圧含浸後、乾燥炉の中でのステータの姿勢に起因していると考えられます。
写真1 磁性楔の脱落状況
写真2 磁性楔を打替えした鉄心
ロータ関係
鉄心表面には磁性楔との接触により発生した条痕が多数発生していました。写真3、4で分かりますが、楔と楔の繋ぎ目に相対する部分には、深い条痕が発生していました。
写真3 ロータ全景
写真4 ロータ鉄心表面拡大
ロータ鉄心摩耗による電動機特性への影響
本機は全閉スロットなので電動機の始動特性には余り影響しないと考えますが、エアーギャップが大きくなって励磁電流が増加し、ロータ鉄心表面の積層効果が低下して運転時の力率や効率が低下した事が考えられました。従ってメーカ出荷時の特性とオーバホール終了時の特性を比較してみました。比較表を表1、2に示します。
【まとめ】
以上のように電動機の特性は悪化してしまいました。最近は磁性楔が小型機だけでなく大型機にも広範囲に使用されるようになってきました。しかし残念ながら磁性楔の緩み対策については、メーカの対策は万全とはいえません。ユーザとしては自衛策として早めにオーバホールを行い、初期の段階で緩みを処置する必要があります。
【最近の磁性楔脱落による事故例の追加】
事例5に磁性楔脱落によるステータコイル接地事故例を掲載しましたが、最近、又、同様な事故を経験しました。事故機は6P-1500kW誘導発電機です。72スロット中1スロットの磁性楔が途中で折損脱落し、折損端部でステータコイルが接地事故を発生していました。磁性楔の緩みをテストハンマによる打音にて調査した結果、コイル接続側の楔には全く緩みはありませんでしたが、反接続側の楔には問題とするほどの緩みはありませんが、少し緩んでいると判断される楔が散在していました。 事故時の状況を写真5及び6に示します。
このような現象に遭遇すると、同様な部分の楔がそんなに緩んでいないのに、どうして1本の楔だけが顕著に緩むのだろうかと疑問に思うことがあります。即ち楔緩みは、不思議と一箇所だけが猛々しく緩んでおり、したがって、製造時に作業者がこの楔だけ固く打ち込まなかったのではないかと思われるほどです。残念ながらこのような事例を過去にも数多く経験しています。
合成樹脂製の楔緩みに伴う事故は、一般にコイルが電磁振動して絶縁摩耗から絶縁破壊事故に発展する関係から、事故発生までの時間が比較的長くかかるようですが、磁性楔の場合は緩み発生から絶縁事故発生までの時間が短いようです。したがって、磁性楔を使用した場合、その緩み防止の更なる徹底がメーカの責任と考えます。
写真5 事故部
写真6 事故部拡大
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